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【レポート】

Pentium 4対応のファンレスPC「SUMICOM S615」

1 Pentium 4対応でどのようにファンレスを実現しているのか

2004/03/26

吉井孝史

「豊かな森とは、空に向かってそそり立つ喬木だけではなく、様々な植生が絡み合ってこそ成立する」と、ふと何かの本で読んだこんなフレーズを、このレポートの冒頭にぜひ書きたいと思った。実は、これは今回の「SUMICOM S615」の取材を終え、帰宅途中で思い浮かんだフレーズなのだが、そう思わせるだけのインパクトが「S615」の試作機に備わっているように思う。その取材レポートをお届けしよう。

SUMICOMと慶揚通訊(King Young Technology)

「S615」の試作機とは、どんなものなのかを書く前に、SUMICOMとKing Young社について簡単に説明しておきたい。本誌ですでに何度かSUMICOMに関するレポートをご覧になった方もいらっしゃるとは思うが、「SUMICOM」とは、Super Mini Computerの英語名の頭文字を取って命名された、慶揚通訊(King Young Technology)の一連のX86系ミニコンピュータ・シリーズのこと。そしてKing Young社は、今ではすっかりPCのトレンドとなった、キューブ型コンピュータの開発を手がけた鄭萬成(Robert Chang)氏が、「地球環境にもやさしい、グリーンコンピュータ」を目指し、PC開発の各分野のベテラン達と共に二年前に設立した会社である。

Pentium III向けの「SUMICOM S300」に始まり、その後Pentium 4向けの「SUMICOM S600」シリーズと、これまで二年間で様々なバリエーション機を生み出しながら、小型のデスクトップ・コンピュータ作りを続けており、秋葉原などでも一部の機種はベアボーンとして販売されていたので、覚えていらっしゃる読者の方も多いのではないだろうか。

では、一連の「SUMICOM」シリーズの最新機となる「S615」はどんな機種なのだろか?

Pentium 4対応のファンレスPC「S615」

「S615」とはその型番からわかるとおり、Pentium 4に対応した製品であり、しかもファンレスのいわゆる「静音PC」。いわば、超低電圧版Pentium IIIを搭載し、「SUMICOM」シリーズ初のファンレスPCを実現した「SUMICOM S310」の後継機にあたる製品なのだが、「S310」が一般的には手に入りにくかった超低電圧版Pentium IIIを使用していたのに対し、誰でも入手可能なPentium 4が使える点が大きく異なる点だと言える。この点については、「S310」の後継機を製作する上で開発者の鄭氏も開発初期段階から特に留意していたことのようで、そのためもあってか、「S615」の開発着手から最終試作機の完成まで、通常より長い2ヶ月あまりを要したとのことだ。

SUMICOM S615の外観。(注:今回の取材時には筐体が完成していなかったため、S310を撮影したもの。IEEE1394のポートの向きが異なる以外は、ほとんど変わらないとのこと)

マザーボードのサイズは、Pentium 4対応のファンレス機でありながら、依然として変わらず、約147mm×253mmの「SUMICOMサイズ(※「ATX」といった一般的な名称がないので、こう呼ばせていただく)」。またPCとしてのレイアウトも、King Young社がパテントをもっているマザーボードに直結する金属フレームに、2.5インチのハードディスク、そしてその上部にノートPC用の薄型CD-ROMを取り付ける方式が用いられており、一目見ただけではこれが新型の試作機とは思えないほどだ。

「S615」の最終試作機でテストを行っているところ。鄭氏は、「開発部門の机はいつも乱雑になりがち」と語っていた。

ファンレスの「S615」であっても、「SUMICOM」スタイルは変わらない。ちなみに、CPU用のヒートシンクも、鄭氏の自作だとのこと。

ただファンレスを実現するためにCPUに取り付けられたヒートシンクが、アルミでできた筐体内部上面に接触するようになっている点が、「S620」との外見上での唯一の相違点となっていおり、それ以外は、同じく筐体内部下面に接触し、内部の熱を素早く筐体に逃がすためにマザーボード下面に取り付けれられている金属片も、特に大型化してはいない。

そのマザーボードを、初代機の「S300」とほぼ同じ容積をもつ筐体内部(※筐体上面と下面に大型のヒートシンクがあるので、PCとしてのサイズは「S620」と同じ)にガイドレールに沿って取り付ける方式となっているのも、従来シリーズと何ら変わらない。

テスト機のメモリは、256MBのDDR400をデュアルで搭載していた。

採用されているチップセットも、「S620」と同じIntel 865GとICH5となっており、FSB800MHz、Hyper-Threading、およびデュアルチャネルDDRに対応している。しかし今回は、筐体内部の発熱を徹底的に抑えなければならないこともあってか、外部電源から供給される電力を無駄なく使用し、できるだけ熱として逃がさぬよう、回路の配線も新たにチェックし直してあるとのことだった。

Pentium 4対応でどのようにファンレスを実現しているのか

ご存知のようにTDP(Thermal Design Power)が上昇し続けている「熱いCPU」のPetium 4を搭載する小型PCを、実際どのような手法でファンレスPCにすることが可能だったのだろうか。

実は、鄭氏の取った方法は、CPUのクロックを必要に応じて落とすというもの。例えて言えば、大馬力のエンジンを積んだ車でも、スロットル全開で走れる時間はそれほどなく、交通量などの影響もあり、それ以外では大部分の時間回転数を落として走行しているのと同じように、BIOSでCPUのクロックスピードを必要に応じてコントロールしようという発想だ(※ただ「S615」ではファンレスという制限上、フルスロットルつまり本来のCPUのクロックスピードで動作することはないとのこと)。

この種の発想はノートPC向けのCPUにはよく見られるものでもあり、見方を変えれば「S610」にあった二段階でCPUのクロックスピードを自由に切り替えられる「SPEEDスイッチ」の延長線上に位置するとも言えなくはない。しかし、デスクトップPCでここまで細やかにクロックスピードを積極的に変化させようとした例は、いままでにあまりなかったように思う。


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