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【インタビュー】

「連想プロセッサ」の開発 - 賢いコンピュータを目指して

1 今のコンピュータの限界

2005/01/01

古林高

東京大学 新領域創成科学研究科の柴田直教授

数億個のトランジスタを搭載するようになった現在のコンピュータ用プロセッサ。それらを数万個用いた世界最高の電子頭脳であるスーパーコンピュータは、まもなく100TFlopsを超える途方もない処理能力を備えようとしている。

しかしそれらが人の頭脳に近づいたと言えるだろうか。スーパーコンピュータはプログラムによって決められた処理を超高速に実行することができる一方で、人のように意外なひらめきやアイディア、独自性のある考察などを結果の中に豊かに示すことはできていない。また現在、二足歩行ロボットの開発が盛んに行われている。スムースで見事な二足歩行はできるようになっているが、その振る舞いは概ねプログラムされた範囲内であり、生き物のように状況に応じて臨機応変に柔らかな応答ができるかというと、全般に極めて機械的である。

依然としてコンピュータは機械であり、生き物としての印象は持ち難い。この印象は必ずしも物質としてのコンピュータが硬い金属で出来ていることに由来しているわけではないだろう。コンピュータは、極めて正確に膨大な計算を行うことができる一方で、人と柔軟に臨機応変な会話をしたり、全体の雰囲気から大まかな判断を下すといった「柔らかい処理」「直感的処理」がほとんど出来ていない。

これは、現在のコンピュータによる情報処理技術の性質に由来すると思われ、このままいかにトランジスタを集積させ、ムーアの法則を進めていったとしても、いわゆる人間らしい「賢いコンピュータ」は生まれてこないのではないかという印象がある。真の鉄腕アトムを実現するためには、現在のコンピュータとは質的に異なる情報処理技術が必要になると感じられる。

では、コンピュータが人の頭脳により近づく道はどこにあるのだろうか。その答えの一端を探すべく、「連想プロセッサ」を開発中の東京大学 新領域創成科学研究科の柴田直教授にお話を伺ってきた。

-- 今日はお忙しいところお時間を頂きましてありがとうございます。先生は、「連想プロセッサ」を開発されているとのことですが、これはどういった技術なのでしょうか。今の研究に至る経緯や動機、そして連想プロセッサの技術内容について教えてください。

私は、最先端の半導体技術を使って賢い情報処理技術を開発していきたいと考えています。心理学的な脳モデルVLSIを研究しているのですが、その心理学的という言葉は、運動神経が一つ一つ応答するというレベルではなく、もう少し高次なレベルを指しています。我々が頭で知的なことを考えたり、芸術を見て感動する、そんなことができるものを作りたいと思っています。

東芝時代の専門は半導体製造プロセス技術

私の略歴なんですが、大学では電子工学を学び、大学院では物性理論を専攻しました。東芝に入ったのが1974年です。確か私が東芝に入って3年後位に、桜井さん(桜井貴康氏:現在は東京大学 国際・産学共同研究センター教授)が東芝に入ってきたと思います。彼は設計でしたが、私はもともと物性理論をやっていたこともあり、半導体のデバイス・プロセスをやっていました。私はどちらかというと、今でも物づくりのほうが得意です。

ですから、私の(東芝での)最後の時期は、スーパークリーンルームで開発エンジニアをやっていました。現場で歩留まり管理をやっていたんです。ウェハを顕微鏡でパッと見て、これはエッチングが悪いとか、酸化膜厚が間違っているとか、これは酸化時間をもっと延ばせとか、そういうことの専門家だったんです。

1986年に丁度東北大学の大見先生(大見忠弘氏:東北大学未来科学技術共同研究センター教授)がスーパークリーンルームを作られたんですけれども、そのときに教官にならないかという話が来て、1986年に私は東北大学に行きました。で、最初はクリーンルームに関係した技術をやっていました。普通シリコンプロセスの温度は900度から1000度ですけれども、それを350度くらいで高性能なエピタキシャルシリコンを成長させるといった低温プロセスの研究を80年代の終わりにやっていました。つまりプロセッサとは関係ない仕事をしていたんですけれども、その80年代の後半というのは、あなたも言われたように一種のニューラルブームが起こった時期でした。


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