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【インタビュー】

ブロードバンド携帯電話で企業の情報システムは大きく変わる

2005/08/08

大川淳

米salesforce.com上級副社長兼セールスフォース・ドットコム代表取締役社長 宇陀栄次氏。日本アイ・ビー・エム情報サービス産業事業部長、ソフトバンク・コマース代表取締役社長などを経て現職

ASP型のCRM事業を展開している、米salesforce.comが大きく成長している。インターネットを介したオンデマンドCRMサービス「salesforce.com」を中核に、2005年度第1四半期(2005年2-4月)の売上高は対前年同期比84%増の6,420万ドル、当期純利益は同10倍の440万ドルだった。日本市場でも、auの第3世代携帯電話を端末とする「salesforce.com Mobile Edition for au」を発表するなど、この新たなビジネスモデルで積極的な攻勢をかけようとしている。同社上級副社長で、日本法人セールスフォース・ドットコムの代表取締役社長でもある宇陀栄次氏に、同社の特徴と今後の見通しについて聞いた。

--なぜ、急成長しているのか

最近、CRMサービスは全体としてはそれほど大きく成長しているわけではない。しかし、セールスフォースは伸びている。サービスの質が異なるからだ。salesforce.comは、Web上の他の新しいサービスとの連携がすぐにできる。たとえば、Googleの地図情報サービスと連動して顧客企業の位置を表示したり、CTIシステムとリンクしてコールセンター機能を実現したり、さまざまな可能性がある。この点が大きな違いだ。こうした連携のしやすさから、口コミで当社のサービスのことが広がっている。広告、宣伝はそれほどしてはいない。情報システムは登山のようなもので、1合目、2合目と登り、5、6、7合目と進んでいくうちに、重要な要素などがだんだん見えてくる。1、2合目でダメだとわかれば引き返せばよい。やはり有益だと考えれば入り直せる。しかし、これまでの情報システムは一旦導入するとなかなか変更できなかった。投資額も大きかった。いわば、自社ビルを建てるようなものだったのだが、salesforce.comは賃貸オフィスといえる。

--中小企業がCRMを導入する際の課題は

決定的な問題は人件費だろう。IT専門要員を配置することは中小企業にとって相当高いハードルになる。ハード/ソフトは安くなっているが、IT要員の人件費はそうはいかない。salesforce.comなら、IT専任者はいなくても利用できる。パラメータ設定だけで、プログラムコーディングなしで済む。コストを抑制できる。

--企業の情報システム構築に求められているものは

これまでのERPなどは、なぜ、日本企業が、(それぞれの製品のベンダーがある)外国の会社のやり方にあわせなければならないのか、という不満の声があったが、salesforce.comの場合、顧客やパートナー企業のもつ独自のサービス、機能を組み込めるなどカスタマイズできる。日本の顧客の要求が標準的になったことも結構多い。全世界でおよそ30万人のユーザーが使っているので、大勢の人々のアイディアが集まっている。いろいろな人々の機能要求、知恵が活かされている。

顧客情報の基本画面から……

Google Mapsで地図を表示できたり、駅すぱあとで最寄り駅までの経路を調べられたりと、さまざまな他のWebサービスと連携している。特にGoogle Mapsなど発表されたばかりのサービスにいち早く対応しているのは特徴的だ

--携帯電話で活用できるシステムを発表したが、反響は

モバイル型のASPサービスには関心が高い。テスト運用を望む企業は10以上ある。どこの通信事業者も法人向けサービスの目玉と考えている。従来、通信産業とITの業界は、実はすみ分けていた。だから、両者は近いようでいて、お互いにそれぞれのことを良くわかっていなかった。そのため、ブロードバンドのない時代は、ITと通信との連携は十分ではなかった。だが、次世代携帯電話のネット接続で、例えば下り速度が3Mbpsあれば十分ASPができる。最近はテレビ放送が視聴できる端末もあるようだが、ストリーミングで高品質の動画配信が可能になれば、法人向けサービスで相当多くのことができる。

--モバイルや通信を重視している理由は

ITの世界の大きな革命は、Windows 95が登場した1995年で最後だった。この10年は(ITではなく)通信技術の革命の時代だ。インターネットもほとんどは通信の領域になる。この次のコンピュータの革命はICT(IT+プラスCommunication)だと考えている。インターネット、携帯電話、ブロードバンド、これらの社会基盤のうえでITはがらりと変わる。我々のサービスはインターネット技術が必須で、ブロードバンドがないと、レスポンスをキープできない。

これまでのITは、端末側から情報を見に行っていた。これはpullだ。いま、携帯電話でパソコンのもつ機能の一部が使えるようになっていると思われているが、それはちがう。携帯電話はpushだ。セールスフォースでは、現場の営業要員が取り付けた契約が一定以上の金額であれば、その事実は自動的に経営層の携帯電話にメールで送信される。経営陣は24時間どこにいても事業の最新の状況がわかり、それを事業スキームに組み入れることができる。

情報システムは、まず大型汎用機があって、それが分散環境になり、いわゆるダム端末が現れ、クライアント/サーバー型が出てきて、パソコンがつながり、多機能なパソコン端末から今度はシンクライアントになり -- と、集中と分散を繰り返してきた。その先は携帯電話で、特定の機能だけあればいいというような場合もある。多様な組み合わせが考えられる。

携帯電話などによるモバイル化は利点が多い。データはセンターのサーバー側に置いておき、端末と直接やり取りするほうがよい。センター集中型は、それが100%良好とはいえないが、IT専門要員のいない中小企業などが自社でセキュリティを確保しようとするより、利便性も安全性も高い。

--オンデマンド型CRM分野の見通しは

日本法人の事業規模はいまのところ「ひよこ」ほどだが、市場規模でいえば、現状の100倍以上はある。ASPサービスはもっと成長する。セキュリティ保護の流れも追い風になる。通信キャリアはみな、ASPに興味を持っている。ネットワーク上での業務アプリケーションサービスの規模は莫大なものになる。需要は間違いなくある。従来は「2割の商品が、全体の売上の8割を稼ぎ出す」と言われていたが、amazon.comでは、インターネットによりこの理論が崩れ、ベストセラーだけでなく、上から4万番目くらいの本にも目が届くようになった。それらのような本も、ある程度まとまった数量になれば、売上に貢献する。「ロングテールの法則」と呼ばれる考え方だ。業務アプリケーションでも同じようなことができる。それがWebの強みだ。


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