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【レポート】

実験住宅「ユビキタスホーム」へ引っ越してみた

1 「引っ越しします」

2005/12/13

美崎薫

「引っ越しします」

と書いたところ、ちょっとしたセンセーションを巻き起こした。すわ、あの美崎薫が、(大枚はたいて作り込んだ)「記憶する住宅」を離れて、いったいどこへ行くのかと騒ぎになったのだった。

種明かししてしまえば、行く先はけいはんな(京都/大阪/奈良の中間にある研究都市)の情報通信研究機構(NICT)が作った実験住宅「ユビキタスホーム」。そこに居住実験のために、2週間滞在をすることになったのである。「記憶する住宅」から「ユビキタスホーム」へ。華麗なる引っ越しである。

2週間の滞在で、どうして引っ越しなのかと訝しがられるかもしれないが、短期間とはいえ、机、21.3型ディスプレイ、コンピュータ3台、2週間分の本(1日1冊のペースでの読書を目標としているので14冊)、マイピロー(枕が変わると眠れなくなる質?)など、荷物は膨れ上がり、気分はほんとに引っ越しなのであった。

机やディスプレイも持ち込んだ

こんな大荷物を抱えてやって来たのは、新幹線の京都から近鉄線にのって約30分。祝園(ほうその)駅からバスで15分ほどの研究都市のいちばん奥まったところに位置する通信総合研究所(NICT)の三角形の建物だ。

研究都市というと、1985年のつくば博で整備されたつくば学園都市が知られているが、けいはんなの研究学園都市も、つくば同様に、道路は広く車中心に作られていて、人の気配は感じられない。電線はもちろん地中化され、歩道もやたらと広い。未来的なSF的な空間といってよいだろう。

未来的な空間というと、先ごろグイン・サーガを見事100巻達成し200巻宣言まで飛び出した栗本薫の若書きの『レダ』が印象深い。生活すべてをコントロールされた未来都市「ファーイースト30」で、主人公の少年イヴ・イェンセンは、銀色の髪をもち、風のように自由で不思議な女性「レダ」と出会うボーイ・ミーツ・ガールものである。

初日の説明……

引っ越しの初日は、10時50分新横浜発ののぞみで出発だ。NICTに到着したのは、14時すぎ。午後、早いうちに到着した理由は、夕方(夕食)までにユビキタスホームの住居としてのレクチャーを受ける必要があるためだ。

旅先でホテルに泊まる場合、最近の設備はかなり多岐にわたっていてとまどうことも少なくないが、電気がついて、風呂のお湯が出て、トイレを流せれば、まあ生活するのに困ることは少ないだろう。

今回のユビキタスホーム滞在は、ゲストとしてではなく居住者として生活することになるので、電気、風呂、トイレ以外にも、冷蔵庫の使い方とか、お湯のわかし方、米の研ぎ方から、食材や食器の配置まで、住宅に関する基本的なことは、すべて知っておく必要がある。ほかにも、近くのスーパー、コンビニエンスストア、病院や緊急の連絡先など、知っておくべきことは無数にある。

ユビキタスホーム

それらの日常的なことに加えて、ユビキタスホームならではの機材の説明がある。

直火厳禁でオール電化のユビキタスホームでは、IHのクッキングヒーターでの調理が義務づけられているが、これまで使ったことがないので、火力や使い勝手に一抹の不安もある。

そんなわけで、まずはざっくりユビキタスホームを案内されたのだが、なによりびっくりしたのは冷蔵庫だった。冷蔵庫くらい開けられるだろう、というのは、まあ日本に生まれて数十年、普通に暮らしてきた人間のひそかな自負であるわけだったが、冷蔵庫の日進月歩はなかなかすばらしい勢いで進んでいて、開けた途端に「美崎さんそれは違いますよ」と指摘されてしまったのだった。

「みんな最初は扉をこじ開けるんだけど、このボタンを押せば開くんです」

と、扉を見ると、たしかに冷蔵庫の扉を開くボタンがある。扉を(こじ)開けたときに、なんだか引っかかりがあった気もする。「そりゃ気づかないよ……」と内心思わないでもないが、ボタンで開く冷蔵庫は、荷物を抱えていたりする場合には、たいへん有益だろう、と考える程度にはインタフェースにも詳しい美崎は、う〜ん、このまま説明を聞き始めたら、ユビキタスホームに住み始めるのには、どのくらい時間がかかるのだろう、といささか途方にくれた。

ユビキタスホームの電化製品の説明書は、10cmくらいのバインダーで2冊分になる。戦後60年、キッチンの電化は著しく進んでいるほか、洗濯機、フラットテレビ、プロジェクターなどなど。これを1日でマスターするのは、なかなか難儀なものである。


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