【レビュー】
OpenBSD/zaurus - 生粋のBSD環境を掌の上で楽しむ
1 OpenBSD/zaurus
2006/03/20
「Linux Zaurus SL-C3000/C3100」をPDAとして扱うか、ポケットに入るPCと捉えるかは、使う人それぞれの目的次第ではあるが、PDAとしての利用を前提とする場合は、標準搭載されているQt/Embedded環境が最大公約数であろう。しかし、日頃からUNIXメインの環境で作業していたり、学術系でUNIX系のアプリケーションを多用せざるを得ないユーザーや、これからUNIX環境に習熟しようとしているのであれば、標準的なUNIXに生粋のX Window System環境として利用できるに越したことはない。また、サーバ管理を生業としている人間にとっても、外出先でも動作検証が出来れば、これは代えがたいものになるだろう。
そこで本稿では、掌の上に載るネイティブなUNIX環境として、セキュアで頑健と言われているOpenBSDを紹介する。今回はインストール前の作業から、インストールそして環境構築までを説明するため、少々長丁場になるがお付き合い願いたい。
Linux Zaurus SL-C3000/C3100
Linux Zaurus SL-C3100/C3100に標準搭載されている環境は、Linux Kernel 2.4系をベースとしたものだが、一般的なPCで利用されるLinux環境とは少々異なる。例えば、ファイル操作で多用されるターミナルコマンドの一部ではBusyBoxが採用されるなど、占有するディスク容量を軽減するように、いわゆる組み込み機器向けのチューニングが施されている。
また、ユーザーがもっとも触れるであろうGUI環境は、UNIX環境において一般的なX Window Systemではなく、組み込みデバイス機器向けに開発されたQt/Embeddedが採用されている。もちろん、UNIX環境としても利用できることには違いはない。しかし、普段デスクトップ環境としてもっとも利用されおり、多数のLinuxディストリビューションやFreeBSDなどのPC上で動作するUNIX環境が採用しているX Window Systemとは、操作感はもとより、その外観にも大きな違いがある。
つまり、ユーザーが普段触れるインタフェース部分に関しては、SL-C3000やSL-C3100において4GB HDDが搭載されたとはいえ、それまでのSL-C700/C750/C760/C860をそのまま踏襲したものとなっている。
それゆえ、UNIX環境に慣れ親しんだユーザーの多くは、Qt/Embedded向けに開発されたX11環境であるX/Qt Projectに加えて、必要となるX11対応のアプリケーションをインストールしたり、別稿で紹介したpdaXromのように、OS自体を全部入れ替えてしまうなど、様々な方法で日頃利用しているUNIX環境に近づける努力をしている。
OpenBSD 3.8/zaurus
そんなおり、セキュアなBSD系OSとして著名なOpenBSDにおいて、2005年5月にリリースされたOpenBSD 3.7からLinux Zaurus SL-C3000が正式対応プラットホームに加えられた。これらについては「OpenBSD 3.7リリース - ザウルス SL-C3000を正式サポート 」や「OpenBSD 3.8リリース - "Linuxザウルス"への対応にも進展」 などの記事でも取り上げられている。
ただし、OpenBSD 3.7の場合は正式対応とは言っても、サポート機種でありながらSL-C3000に搭載されたハードウェアを全て扱えるものではなく、プラットホームとして、安心して利用できるレベルであったとは言いがたかった。
しかし、その後も引き続きデバイスサポートが追加されるなど、2005年11月リリースの3.8以降では至極安定したものとして仕上がっている。3.8で追加・修正された項目が公式サイトにリストアップされているが、SL-C3000/C3100に関係する項目が多数挙げられている。
注目すべき変更点は、オーディオドライバの追加や赤外線のサポート、APM周りのブラッシュアップ、タッチスクリーンの調整コマンド追加など。つまり、OpenBSD 3.8になって、ようやく真っ当なサポートプラットホームとなったとも言える。もっとも、SDIOは未サポートなど、ザウルスのハードに密着した部分ではまだまだ十分とは言えず、現在も引き続き頻繁に開発が続いている。
そのほか、ザウルス関連で気になる修正点は下記の通り。
- LEDコントロールのサポート
- ztssccale(8)、タッチスクリーンのキャリブレーションツール追加
- PGUP/PGDOWN/HOME/ENDを[fn]キー+カーソルキーでシミュレート
- 全DOS MBRパーティションにインストール可能に(3.7では/dev/hda4のみをサポート)
- zaudio(4)、オーディオ再生をサポート
- パワーボタンでのサスペンド及び終了をサポート
- 液晶オープン時のみパワーボタンが押された時にレジューム
- apm(8)、ブラッシュアップ
- ohci(4)、サスペンド及びレジューム対応
なお、上記のページには明記されてないが、個人的にもっとも重要だと思う修正点は、ext2ファイルシステムへの書き込みが安定したことだろう。3.7やその直後は、ext2ファイルシステムに書き込むと、ログも吐かずにカーネルがクラッシュすることも多々あり、安心して利用することはできなかった。
それでは、インストール前のデータバックアップに始まり、OpenBSD/zaurusのインストールから設定、そして日本語環境を含めた環境構築までを解説しよう。
警告
本稿の記述内容は、執筆者を含めて複数の人間が検証を行っているが、本稿の内容が完全な動作を保証するものではなく、あくまでも実践例であり、試験的にであれ各自が実施する場合は、必ず自己の責任において利用して欲しい。
最悪の場合、対象のSL-C3100が起動しなくなる状況に陥ることも考えられる。したがって、以降の作業内容は、Linux Zaurusのメンテナンスカーネルでの作業などを含め、PCならびにワークステーションで動作するUNIXに深い知識を有する方を前提にしている。
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