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【レポート】

ニンテンドーDSで百人一首を体験、京都嵐山の新名所「時雨殿」

3 小倉百人一首の歴史にも触れられるなど、見所は多数

2006/04/02

野口智弘

フロア出口で時雨殿なびを返却し、さらに奥へと進むと、小倉百人一首にちなんだふたつのゲームが用意されている。ひとつ目の「体感かるた五番勝負」は、歴史上の歌人と対戦できるかるた取りゲーム。ゲームが始まると歌が読み上げられるので、手元の画面に表示された6枚の札から該当するものを選んで、対戦相手よりも早く取ることができれば勝ち抜き。対戦相手は清少納言、蝉丸、大弐三位、紫式部、藤原定家の5人で、勝ち抜くほど手ごわい相手が登場するようになっている。

時雨殿なびを返却して奥のフロアへ。ここでは「体感かるた五番勝負」と「謎解きの井筒」というふたつのゲームで遊ぶことができる

「体感かるた五番勝負」から。上画面には対戦相手の歌が表示され、タッチパネルとなっている下画面に候補の札が表示される。大型のニンテンドーDSといったところ

案内係のなかで百人一首が得意な方に挑戦していただいた。二回戦の対戦相手は百人一首を忘れた人にもなぜかおなじみ「蝉丸」

順調に勝ち抜いて5人目には最終ボス(?)である小倉百人一首の撰者、「藤原定家」がついに登場!

藤原定家は上の句が詠まれると瞬時に取ってしまうため、対応する下の句を覚えていなければ勝利は不可能。感動のエンディングはぜひみなさんの目で確かめていただきたい(勝てませんでした)

もうひとつの「謎解きの井筒」は、井戸の形をしたブースで行われるクイズ形式のゲーム。順番記憶や間違い探しなど、小倉百人一首に関連した問題が5問出題される。「体感かるた五番勝負」「謎解きの井筒」とも、画面に直接触って進めるようになっており、説明がなくても誰でも簡単にゲームを遊ぶことができる。なお1階の展示の監修には、マリオの生みの親として知られる任天堂の宮本茂氏が関わっており、総じてわかりやすく楽しい内容に仕上げられている。

「謎解きの井筒」もタッチパネルを活かしたゲーム。水面にあたる部分に触れることで、ゲームを進めるようになっている

これは人物からのヒントを参考にして、位の高いほうの人物を選ぶ問題。記憶力や瞬発力が試される問題もあるなど、ちょっと『脳トレ』ふう

以上が1階の展示内容で、2階に上がると120畳の大広間が広がっている。大広間は百人一首の大会にも使われるとのことだが、通常の開館日には「小倉百人一首 歌合せ」として、小倉百人一首に歌が選出された歴史上の有名な歌人を模した人形が歌合せに興じている様子が展示されている。史実に従い、それぞれ時代に合わせた装束をまとっているのが特徴で、そのため小野小町が十二単を着ていないなどの新鮮な発見が盛り込まれている。

2階に上がると廊下からは嵐山を流れる保津川が望める。観光名物である舟下り「保津川下り」も眺められるなどまさに絶景

120畳もの大広間には紫式部や小野小町などの歌詠みの様子を再現した「小倉百人一首 歌合せ」を展示。それぞれの時代の名歌人が居並ぶ

「小倉百人一首 歌合せ」の小野小町。小野小町が生きた平安初期には十二単は考案されてなかったため、実際はこのような装束だったと考えられている

また大広間の廊下では江戸時代から現代までの貴重な百人一首の数々が展示されており、1200年代前半の成立から、長きに渡って百人一首が人々に親しまれてきたことが見て取れる。浮世絵ふうの「錦絵百人一首かるた」、現在でも北海道で使用されている木製の「百人一首板かるた」、賭博用として用いられたという「むべやまかるた」、明治の末ごろかるた競技を全国で統一するために作られた「標準かるた」、戦時中に作られた「愛国百人一首かるた」など、時代を反映して作られた様々な百人一首の例は今日の我々の目から見ても興味深い。

浮世絵などを製作した絵草子屋の「錦絵百人一首かるた」。江戸時代後期のもの

西洋絵具が輸入された影響で大胆な色使いがなされている「明治期百人一首かるた」。実際はあまり好まれなかったとのこと

大正時代に作られた「百人一首板かるた」。普通のかるたと異なり、下の句を読んで下の句を取る

賭博用だったものを転用したという昭和時代の「むべやまかるた」。読み札に番号が振られており、歌人ではなく大衆向けのもじり絵が描かれている

「むべやまかるた」のもじり絵の例。もとは「村雨の露もまだ乾ぬ槙の葉に 霧立ちのぼる秋の夕暮」という歌だが、「きりたちのぼる」をそのままもじって桐の木に子供が登っている

戦時中に任天堂が発行した「愛国百人一首かるた」。天皇を描いた札で遊ぶことが禁止されたため、持統天皇などの札は御簾のみが描かれている

同じく戦時中に発行された「絵入愛国百人一首かるた」。小倉百人一首とはまったく異なっており、武人による帝を敬う歌などが選ばれている

以上が時雨殿のおもな内容。展示以外の点で感じたこととしては、最新のデジタル技術を投入しているものの、百人一首を題材としていることで、ゲーム世代よりもむしろ年配の来館者が多かったことが挙げられる。またそうした来館者の方々が、時雨殿なびを楽しみながらきちんと使いこなしていたことも印象的だった。直感的な操作と新機軸のゲームで敷居を下げ、女性層や年配層からの支持を獲得したといわれるニンテンドーDSだが、その敷居の低さはこの時雨殿においても発揮されていた。

実際に展示施設の携帯用端末に携帯型ゲーム機を使うという活用例は意外なほど相性がよく、時雨殿なびを操作してみると「ボタンのないニンテンドーDS」の違和感のなさに驚く。Webブラウザや、ワンセグ放送受信機としての開発も進められているニンテンドーDSだが、そうしたゲーム以外への応用例として、この時雨殿における時雨殿なびは大きな試金石といえるのではないだろうか。

また施設内の見どころは多いものの、比較的短時間で見てまわれるため、京都散策のスケジュールに組み込みやすいというのも時雨殿のメリットのひとつ。嵐山は桜の名所でもあるため、今の季節にはまさにうってつけの観光スポットといえる。京都を訪れる際にはぜひおすすめしたい新名所だ。


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