【インタビュー】
アニメーションソフト「うるまでるびペイント」 - アーティスト製ソフトは職人の伝統"自分の道具は自分で作る"
1 コンピュータは描き手の試行錯誤を邪魔せず、アシスト役に(うるま氏)
2006/05/08
自分にとって使いやすいアニメーション制作ソフトを求めて
自分がソフトに合わせるなんてイヤ! 自分と相性の合うソフトがないなら、自分好みの新しいアニメーション制作ソフトを作ろう。そんなクリエイターにとっては夢のようなことを、実際に行動に移しているアーティストがいる。アーティストのうるまでるび氏だ。「うるまでるび」とは2人のアーティストうるま氏とでるび氏のユニット名。イラストレーターを職業とするぼくは、この話を聞いて、さっそくおふたりに会いに行った。お話を聞きながら、ソフトを見せてもらうために。
うるまでるび氏は、これまで多くのキャラクターやアニメーション制作を手がけている。また、それだけにとどまらず、自分で描いた絵が勝手に動き出す「びっくりマウス」などプレイステーションのソフトの製作、ニフティの「インターポット」の考案もしている。「デジタル業界の人は"絵を描く人"だと思っているし、アーティストの間では"デジタルに強い人"だと思われている」(うるま氏)という。ひとつの枠には収まり切らない活動だ。ぼくは個人的に「しかと」というキャラクターがお気に入り。顔が歩いているようでカワイイのだ。
うるまでるび氏は、現在はおもにアドビ システムズの「Macromedia Flash」を使って、絵を描いたりアニメーションを制作したりしている。Flashはもう10年以上も使い続けている古株ユーザーだ。だが、ツールを使い込んでいるからこそ、どうしても気になる部分があったという。「特に気になる点は、線の描き心地だったんです。描き手は"自分の線"が大切なんです」(うるま氏)。ぼくも使ったことがあるのでわかるのだが、Flashには描いた線を自動的に滑らかにしてくれる賢い機能が備わっている。ところが、線の微妙なカーブを描きたいようなときには、この機能は描いた線を勝手に滑らかにしてしまう、ややおせっかいな機能になってしまうのだ。
また、鉛筆の先でツンツンやるような点々や小さな円が描けない。小さな円は円ではなく、小さな四角になってしまうことが多かったという。「カツオくんの頭のテンテンが描けなかったんですよ」と、うるま氏は笑う。Flashはバージョンを重ねるたびにインタフェースを作る機能がどんどん進化している。いいソフトだとは思う。けれど、絵を描くための機能に関してはデビュー当初からほとんど変わっていないと感じるそうだ。
「コンピュータは描き手の試行錯誤を邪魔するようなことはせず、必要なときにだけアシストしてくれればいい」というのが、うるまでるび氏がグラフィックソフトに求める基本的なスタンス。「創作というのは"無意識"が大切な作業。アーティストはよく"描いていると、"降りてくる"なんて言い方をします。描いている最中に"無意識"を働かせるには、ツールをどう使うか考えるなんていう"意識"は邪魔。意識をほとんど働かせなくてもいいくらい自然に使えるものでないと」。
Teddyの開発者、VZ Editorの開発者、うるまでるび氏で開発スタート
大工など昔の職人がそうであったように、自分の仕事道具は、自分で作る。そんなグラフィック / アニメーションソフト開発の構想を練り始めたのは、今から5年くらい前だった。その後、CGやユーザインタフェースの研究をする東京大学情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻・五十嵐健夫助教授と出会う。
五十嵐氏は、1999年「Teddy」という3Dモデリングプログラムを発表した研究者として著名。現在、うるまでるび氏が開発中のソフトのアルゴリズムを設計している人物でもある。「Teddy」は、2Dで図形を描くと、それがすぐに3Dのポリゴンモデルへと立体化する。この技術を応用した市販ソフト「マジカルスケッチ」は、CGの中でも特に敷居の高い3Dモデルの作成を、子供でも楽しく制作できるようにした。ぼくも初めて触ったときは、大変に感動した記憶がある。「Teddy」の発表をWebで知り興味を持ったうるまでるび氏が、五十嵐氏にメールを送ったのが交流のはじまるきっかけだったという。その時点では、まだ一緒にソフトを開発することになるとは思ってもみなかったそうだ。しかしながら、ただ触っているだけでも楽しいという不思議な魅力を持ったTeddyに、うるまでるび氏は、理想とするソフトの姿を直感的に垣間見たのではないだろうか。
実際にソフトの開発がスタートしたのは、情報処理推進機構(IPA)未踏ソフトウェア創造事業の助成金が得られることになった2003年。五十嵐氏がアルゴリズムを担当、MS-DOS用の超定番テキストエディタ「VZ Editor」の作者・兵藤嘉彦(c.mos)氏にプログラミングを依頼。他にインターポットでうるまでるび氏と知り合ったJavaの達人プログラマー・安達理氏も参加して、理想のソフト作りがスタートした。最初の1年は、絵を描く機能が"理想の描き心地"になるために、2年目からはアニメーション作成の機能のために費やされている。開発言語は、Javaであるため、Windowsでも、Macintoshでも同じように動作する。実際、五十嵐氏、兵藤氏はWindowsで開発を行い、うるまでるび氏はMacintoshで動作を確かめる、というやりとりを行っている。
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