【レポート】
クラウド化する社会でプライバシーはどう扱われるのか - ETRE 08
2008/12/01
インターネットに接続される端末がPCに限定されなくなってきた。携帯電話、ゲーム機、TVなどさまざまな端末が接続し、"いつでも&どこでも"が実現しつつある。また、非接触型ICカードなどの新しい技術が次々と登場し、我々の生活を便利にしてくれる。10月16日、スウェーデン・ストックホルムで開催された技術と投資のイベント「ETRE 08」では、このような社会で懸念される情報と管理について議論するラウンドテーブルが開かれた。
ラウンドテーブルには、米SymantecのCTO Mark Bregman氏、米AT&T モビリティ部門副社長 Mary Pagano氏、デバイスセキュリティベンダ 米MocanaのCEO Adrian Turner氏が参加し、日本経済新聞の産業部編集員 関口和一氏がモデレータを務めた。
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ラウンドテーブル参加者: 左からMary Pagano氏(AT&T)、Adrian Turner氏(Mocana)、Mark Bregman氏(Symantec) |
クラウドコンピューティングやSaaSという言葉がハイテク業界の流行語となっているが、3年後、我々はどのような世界にいるのだろうか? と関口氏が問いかける。
AT&TのPagano氏は、ワイヤレス技術がもたらす価値は予想不可能という。LTEやWiMAXが待ち構えており、PCも引き続き利用されるが、多くは携帯電話などのハンドヘルド端末で事足りるようになると見る。
情報管理は個人の裁量で
SymantecのBregman氏は、「技術は便利で可能性は無限だが、欠点もある」と言う。たとえば非接触型ICカード。このようなチップが付いた定期券でゲートを通過するたびに、自分の情報が収集されることになるが、「ユーザーの99.99%は技術の仕組みを知らない。自分に関するどんな情報が送られているのかを知らない」とBregman氏。
また、当初の目的とは違うことに利用される可能性もある。高速道路の料金所に設置した自動料金徴収システムが、料金所間を通過した時間からスピード違反も特定できてしまう例を挙げる。
そういったことから、Bregman氏は、この3年は情報の利用についてのディスカッションが活発になると見ており、「技術開発と同時に後退も起こるだろう」と予想する。情報の管理に関する問題は不可避だ。
Bregman氏は、プライバシーに関しては国により意識が異なる(一般的に、米国の消費者は割引など価値があると判断すればプライバシー情報を提供するが、ドイツではプライバシー情報を取引しない、など)が、国別に標準を設定するアプローチではなく、個人が管理できることが必要だという。
クラウドに"責任"を追うのは誰か
また、クラウドコンピューティングについては、すべてがクラウドベースで配信されるのではなく、特別なものはオンプレミスのままで、オンプレミスとクラウドのコンビネーションになるとも予言する。
MocanaのTurner氏は、米Appleの「iTunes」や米TivoのSTBなどの成功を挙げ、デバイス、ソフトウェア、ネットワークサービスを組み合わせた製品が増えてくることを予想する。これに、「状況や文脈(コンテキスト)を認識できる機能が加わる」とTurner氏。ここでは、ビジネスとオペレーションの両方を考える必要があるという。
コミュニケーションは人対人から人対マシン、さらにはマシン対マシンに拡大している。だが、「急速な移行は要注意」とするのはSymantecのBregman氏だ。リスクとしては、「自然災害などによるネットワークインフラのダウン、さらに重要なものとしてデバイスを乗っ取るサイバーテロなどが考えられる」という。AT&TのPagano氏も、ビジネスケースとユーザーの必要性を考える必要があるとけん制する。
そのようなリスクを考えたとき、誰が責任を取るのかがあいまいであることに気がつく。損害や財務損失が生じた際に誰が責任をとるのか - 端末、インフラ機器、ソフトウェア、ネットワークなどの要素を持つバリューチェーンにおいて、責任をとろうとする動きはない、と言うのはMocanaのTurner氏だ。
ネットワークオペレータであるAT&TのPagano氏は、「正直なところ、わからない」としながらも、「データを所有する人が責任を持つべきでは?」と問いかける。
SymantecのBregman氏は、「Symantecなどのベンダは、個人や企業が自分の情報を管理するツールを提供する責任がある」と述べる。最終的には、「Webスケールのデジタル著作権管理のようなものが必要」とBregman氏。Google Street Viewに自宅の私道が写っていて気分を害したというBregman氏は、現在ではGoogleに言って削除してもらうしかないが、「自分で削除したり、特定の友人にだけ表示可能にするようなツールがあればどうだろうか?」という。このようなWebスケールのデジタル著作権管理があれば、自分の情報を安全にする/管理する観点が変わるとBregnan氏は見る。問題は、そのような仕組みを業界が実現できるかどうかだ。インターネットの成功は、規制がなかったためだ。規制で縛りつければ発展は生まれないことを我々は体得している。
Bregman氏は、そのような動きがこの5年の間に出てくるだろうという。
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