【レポート】品川から歩いていける未来 - ソニーCSL研究所(1)
2001/01/05
○品川を歩くと未来につく
品川のソニー通りを歩いていくと、いつのまにか未来についている。浦島太郎がカメに連れられ、リップ・ヴァン・ウィンクルが小人と遊んでいるうちに、時を見失ったように、品川にも「未来への時のはざま」があるのだ。取材に行き、やがて、帰る時間がやってきた。でも、そこで見た未来のもつ、あまりの衝撃で、現実にもどってくるのが、いやになりそうだった。戻ってきた世界は、グレーに見えた。ああ、なんて現実空間が、「過去にみえる」ものだろうか。
そう、コンピュータの未来を研究するソニーのコンピュータサイエンス研究所(Computer Science Lab)にいってきたのだ。「メディアラボの10倍効率よく研究する」といわれる、世界で注目を集める研究所である。
○生活全般を扱うインタラクションラボラトリー誕生
ソニーCSLの中に、2000年8月、未来生活を中心テーマとして扱う「インタラクションラボラトリー」が誕生した。インタラクションラボラトリーは、未来コンピュータがどのような形になっていくのかを、主としてインターフェースの面から研究し、現実のソニー製品への応用をめざしている。
CSLから生まれた技術で、すでに使われているものには、たとえばVAIO C1のカメラアイという発想(Cyber Code)、エアボードやPalm系でよく使われる予測文字入力支援ソフトPOBox、VAIOに搭載されたペン用のオペレーションで画像を整理できる新感覚ブラウザVisual Flowなどがある。研究所といっても、現在からかけ離れた研究をしているわけではなくて、ここで出てきた発想は即座に製品に組み込まれるようになっているわけだ。逆にいえば、CSLを見に来れば、近未来の商品の姿が見えてくる、というわけである。冒頭で、未来に着いた、といったのは、そういう意味だ。
○デザインのある日常生活
このインタラクションラボラトリーにはふたつのポイントがある。ひとつは、未来コンピュータのニーズの研究のために、ラボ全体に日常空間、研究室、ミーティングスペースなどを設置したことだ。ここで研究者たちが日常生活を送ることで、フィードバックを得ながら新しいコンピュータを開発していくのである。
もうひとつは、デザイナーの参画である。VAIOの工業デザインを担当する第一線のデザイナーが参加したことで、インタラクションラボラトリーの未来インターフェースは、より洗練されまるで「すぐに店頭で売っていてもおかしくない」くらい、高い完成度をもつようになった。
未来のコンピュータは、現在からは想像もつかないくらい「すごい」はずだ。そのすごさを体験するには、SFや映画で見せられてきたように、かっこいい小道具性が不可欠なのである。
○ガラスの積み木、「Augmented Surfaces」
まず、ひとつめにご紹介するのが、インタラクションラボラトリー室長である暦本純一氏が研究する「Augmented Surfaces」である。「Augmented Surfaces」は、IDつきのガラス板が、将来のコンピュータのインターフェースになるだろう、という予測の実演だ。
透明なガラスには、MusicとかVideoとかWeatherといったように、機能ごとにIDが振られている。現在のコンピュータでいえば、アプリケーションソフトやウィンドウに相当するイメージである。このガラス板をテーブル(そのテーブルには、液晶ディスプレイが格納されている)に置くと、置いた場所がそのアプリケーションというか機能として動作するわけだ。
Musicというガラスを置けば音楽が奏でられ、Videoを置けばビデオ映像が流れ出すという仕組みである。機能とガラスというオブジェクトが一対一で結びつけられているので、あたかもガラスという「モノ」を動かすだけで、その奥にある機能を利用できてしまうというわけである。こういう発想は、従来のコンピュータやアプリケーションでは失われていた感覚であるが、人間の直感的にはきわめてなじみやすい。色鉛筆の色を選ぶと、その色で絵が描けるという感覚に近いかもしれない。
機能はガラス板に埋め込まれたIDによって感知されて、ネットワークで接続して、サーバーでJavaプログラムを動作させているのだが、使うユーザーは求める機能のガラスを見つければよい、という点で、きわめて直感的にコンピュータの機能を扱うことができるのだ。
ガラスには、大別すると、機能(Misic、Video、etc...)のガラスと、コントロール(ぐるぐるコントローラ、設定コントローラ)があり、組み合わせて使用する。たとえばMusicをぐるぐるコントローラでコントロールすると、早送りや巻き戻しができるわけだ。
この組み合わせの方法が、また、従来のコンピュータとはかけ離れているのだが、感覚的にはきわめてなじみやすいものである。つまり、ガラスを隣り合わせておくと、そのガラスの機能をコントロールできるようになるのだ。
従来のコンピュータでは、ケーブルをつないだり、といっためんどうな作業をしなければならなかったが、この「Augmented Surfaces」環境では、積み木を組み合わせるように、並べたり、重ねたり、という動作で済んでしまう。
スリランカ在住のSF作家、アーサー・C・クラークの言葉に、「十分に発達した科学は魔法と見分けがつかない」という、クラークの第三法則として知られる言葉があるが、「Augmented Surfaces」は、まさにそんな感じである。
ガラスにつけられたIDは、小さいのでどんなものにでも内蔵できるから、たとえば携帯電話に入れておけば、携帯電話を自分のIDカードにすることもできる。
マウスとキーボードだけしかなかったコンピュータのインターフェースが、「Augmented Surfaces」技術を使えば、自由に拡張できるようになるのだ。「たとえば、高級オーディオのボリュームは、すごく高級感のあるつまみを使っていますよね。あんな風に、つまみだけを高級感のあるタイプにして、そのつまみでさまざまなモノをコントロールできるようになるんじゃないかと考えています」と暦本さんはいう。
(美崎薫)
【レポート】品川から歩いていける未来 - ソニーCSL研究所(2)
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2001/01/05/09.html
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| ちなみにこの「Augmented Surfaces」を動かしている「超」レアモノのホワイトVAIO。 |
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