【レポート】MMORPG - 終わりなき仮想世界の住人たち(1)
2003/01/01
地上の光の届かない迷宮の最深部。巨大な悪竜を倒すために集まった数十人の冒険者たちは、剣を抜き、魔法を詠唱しながら、リーダーの攻撃開始の指示を待つ。そして竜の吐く炎のきらめきとともに、長い戦いは始まった--。こんなファンタジー小説のような光景が、インターネット上で毎日のように繰り広げられている。
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| 世界で最も人気を集めているMMORPGのひとつ、『エバークエスト』 |
MMORPG(大規模多人数参加型ロールプレイングゲーム)とは、インターネット上のサーバーに構築された仮想世界に数十万人のプレイヤーが接続、仮想世界での冒険や生活を楽しむゲームだ。インターネットの普及により一般的になったこのジャンルは、スクウェアが人気RPGシリーズ「ファイナルファンタジー」の最新作をこの形式で制作、11月にはWindows版も発売されたことにより、日本でも本格的な普及期を迎えた。だが、一方では、プレイヤー間のトラブルや、ゲームに熱中し過ぎて現実生活に支障が出るようなケースも取り沙汰されている。今、"仮想世界"では、何が起こっているのだろうか。
ネットワーク上に仮想世界を築くというアイデアは、そう新しいものではない。1986年には、米ルーカスフィルムが、パソコン通信上の仮想コミュニティ「ハビタット」を開発、1990年には富士通が日本語版サービスを開始している。これとRPGを組み合わせたサービスも、少数ながら存在した。日本では1992年、ある大学院生が非商業ネットワークRPG「ファンタスマル・アイランド」を開発、有志により現在もサービスが続けられている。その後、インターネットの普及に伴い、1996年には、複数プレイヤーによる同時プレイを可能とした商業ネットワークRPGの嚆矢、「ディアブロ」が発売され、世界中でヒットした。この頃には、MMORPGの原型となるゲームも登場してきたが、まだ一般に知られるほどにはならなかった。
これらのネットワークRPGを大規模多人数参加型に発展させ、MMORPGというジャンルを切り開いたのが、米エレクトロニック・アーツの「ウルティマオンライン」。ひとつのサーバー群を1つの世界として、一度に数千人が同じ世界に接続できるようにした。2Dグラフィックで構築された世界に、戦闘や冒険だけでなく、鍛冶や木工などの生産の要素を盛り込んだほか、ゲーム世界に家を持てるなど、仮想世界での「生活」をイメージさせる斬新なシステムを取り入れ、現在でも世界中で25万人がプレイを続けている人気シリーズとなった。
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| ウルティマオンラインで繰り広げられる『派閥戦争』の光景 |
一方、「ウルティマオンライン」に対抗して、米ベラント・インタラクティブ(現・ソニー傘下)が1998年に発売したのが「エバークエスト」。フル3Dグラフィックで構築された美しく広大な世界、数千種類のモンスターや数万種類ものアイテム、多数のクエスト(謎解き)と高い戦略性を盛り込んだこのゲームは、「ウルティマオンライン」を超えるヒット作となり、現在でも世界中で43万人がプレイしている。
この2作のビッグタイトルを追って、現在では世界中で様々なMMORPGが開発・発売されている。特に、インターネットの普及の早かった韓国では、ITビジネスのキラーコンテンツのひとつとして注目され、「リネージュ」「ラグナロクオンライン」など多くのMMORPGが開発されてきた。欧米でも、「アナーキーオンライン」「ダークエイジオブキャメロット」などの作品が人気を集めているほか、2003年には、米ベラントが、人気映画「スターウォーズ」を題材とした「スターウォーズギャラクシー」、ヒット作の第2弾「エバークエスト2」を発売する予定だ。
一方、日本では、90年代末に「ライフストーム」「ダークアイズ」などのタイトルが発売されたが、インターネットの従量課金制が長く続いたことや、外国産ビッグタイトルに押されたこと、日本語対応のゲームが少なかったことなどもあり、商業的に成功するまでには至らず、興味を持った者が、英語環境などで外国産ゲームを楽しんでいただけだった。本格的な普及が始まったのは、ADSLなどの常時接続が普及する一方、「ファイナルファンタジー」というビッグタイトルがコンシューマー機、パソコン双方で発売された最近だ。今春には、「エバークエスト」の日本語版がサービスを開始する。
MMORPGの魅力とは何か。あるプレイヤーは、全く別の世界の中で「好きな自分になれること」だと話す。仮想世界では現実を離れて、勇敢な戦士にも、機知に長けた商人にも、知を極めた魔法使いにもなれる。そして、他のプレイヤーという仲間たちがいる。そこには、顔は見えなくとも、"人"とのつながりがあるのだ。伝説の武具の入手などといった困難な目標を、仲間とともに達成する。その達成感は、現実世界のものと何ら変わりはない。また、「ウルティマオンライン」や「ダークエイジオブキャメロット」なら、何十人のプレイヤーが敵味方に分かれての戦争、「エバークエスト」であれば、数十人のプレイヤーが力を合わせ強大な竜や神に挑む「レイド」など、オンラインゲームならではの楽しみ方が用意されているのも、プレイヤーを夢中にさせる要素のひとつと言えよう。
だが、面白さも度を過ぎると、マイナス面が出てくる。"中毒性"だ。日本ではまだそれほど問題になってはいないが、MMORPGの普及が早かった米国では、MMORPGに"ハマリ"過ぎて、家族との間にトラブルを抱えたり、仕事を失ったりするケースが続出し、問題となっている。MMORPGは、長く時間を費やしたプレイヤーほど「レベル」や「スキル」が上がり有利にゲームを進められるので、我を忘れて、現実生活に支障が出るほど毎日やり込んでしまうためだ。
(日比哲哉)
【レポート】MMORPG - 終わりなき仮想世界の住人たち(2)
に続きます。
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