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高度500kmの宇宙空間にて無人で実験を行うシステムが公開

2003/03/18

宇宙空間の微小重力環境を利用し、地上では作ることが非常に困難な大型の超電導材料を製造する実験が現在、地上からおよそ500kmの宇宙空間で行われている。このプロジェクトは、無人の宇宙機をロケットで打ち上げ、地上からのコマンドで宇宙機内部で実験を行い、その後大気圏に突入させ洋上にて回収するというもので、すでに宇宙機内部で2つのバルク超電導材料の製造に成功したという。

運用概要。現在は、ちょうど真ん中の「軌道上運用」の段階
H-IIAでの打ち上げ。右の画像は、ロケット側から見た宇宙機の分離の瞬間

これは、経済産業省および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が委託し、無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)が実施しているもので、1995年に開発が開始された。このプロジェクトでは、無人で宇宙空間にて実験を行い、実験終了後に帰還する「次世代型無人宇宙実験システム(USERS:Unmanned Space Experiment Recovery System)」の開発を目指しており、今回、その性能検証として、昨年9月にH-IIAロケットで打ち上げられたUSERS宇宙機を使って、前述の超電導材料製造実験が行われている。

17日、超電導材料製造実験の完了にあわせて開催されたプレス向けの説明会では、同プロジェクトの概要や進捗状況、運用管制センターの公開などが行われた。

プロジェクトの概要。写真はUSERS宇宙機で、上がREM、下がSEM
USEF理事 金井宏氏より、USERS宇宙機システムと運用概要について説明があった。概要を簡単にまとめると、USERS宇宙機の重量は約1,700kgで、このうち実験機器を搭載し、地上に帰還するための「リエントリモジュール(REM)」が900kg、実験装置に電力や通信サービスを供給するための「サービスモジュール(SEM)」が800kg。REMには超電導材料製造実験装置のほか、再突入時にプラズマガスの温度を計測するための装置や、民生品の宇宙空間での機能を検証するための実験機器なども搭載されている。昨年10月2日より開始された超電導材料製造実験では、常に10のマイナス5乗以下という微小な重力環境を維持しているとのことで、「優秀な無人宇宙実験システムが確立された」(金井理事)と、システムが期待通りの性能を発揮したことを評価した。

REMに搭載されている電気炉の構造図。炉内にある実験試料は、中心の1点でのみ固定されており、周辺のヒーターとは非接触
実験試料とヒーターの関係。試料は壊れやすいため、打ち上げ時にはヒーターで固定、帰還時にはウレタンの充填剤で保護される

メインの実験である超電導材料製造実験の結果だが、同機には全く同じ機能を持つ合計3台の電気炉が搭載されており、テスト実験、本実験、本実験バックアップと、3回の実験が行えるようになっている。昨年10月6日より開始された電気炉1では、ヒーターに付着した試料の局部反応によって予測値の5倍という過大な酸素消費が起こり中止したものの、続く電気炉3(12月14日〜今年1月26日)、電気炉2(2月2日〜3月17日)の2つでは予定通り半溶融・結晶生成プロセスを完了し、直径10数cmの大型のバルク超電導材料が生成された見込みだ。

公開された運用管制センター。ここから全てのコマンドを行う
今後は、4月3日より帰還運用フェーズに入り、一旦高度483kmの移相回帰軌道(PRO)を経て、5月末には大気圏に再突入する。着水は小笠原東方沖を予定しており、着水後、GPSビーコン信号で自分の位置を探索機に知らせ、回収船がREMを回収することになる。今回製造したバルク超電導材料は液体窒素の温度で超電導状態になるもので、強磁場を補足させて疑似永久磁石として利用した場合、通常の永久磁石より10倍以上も強力な5万ガウス(5テスラ)という磁場を発生できる。将来的には、医療用やリニアモーターカーなどへの応用が考えられるということだ。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
http://www.nedo.go.jp/

無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)
http://www.usef.or.jp/


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