【レポート】ファイル交換による著作権侵害の現状(1)
2003/05/28
高価な業務用アプリケーション、最新のヒット曲やゲームソフト、まだ国内では公開されていない最新の映画--。インターネットの一部では、著作権によって守られているはずのこれら著作物が、堂々と交換・配布されている。ソフトや音楽ファイルがホームページ上にアップロードされているのを見たことがある人、それをダウンロードしたことがある人も少なくないだろう。国民の54.5%がインターネットユーザーとなった(総務省調べ)現在、インターネットにおける著作権侵害は、一般市民が最も犯してしまいやすい犯罪のひとつとすら言える。その実態を追った。
○著作権侵害は"重罪"
インターネットにおける著作権侵害は、大きく分けて2つの種類に分けられる。ネットオークションなどで複製品を売りさばいたりする「販売目的」がひとつ。"愛好者"が、複製品を交換したり無償で頒布したりする「趣味目的」がもうひとつだ。特に後者の方は圧倒的に人数が多く、違法行為や犯罪とは普段は何の縁もない一般市民が、興味本位で手を染めるケースが後を絶たない。コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)によると、「WinMX」などのファイル交換ソフトを使ったことがある人は、推計で145万人に及ぶという。
「販売目的」「趣味目的」の双方とも犯罪行為であることには違いはないのだが、特に「趣味目的」の人は、罪の意識が薄いことが多い。そこで、ひとつクイズを出してみたい。以下の犯罪行為を、最高刑が重い順に並べたらどうなるだろうか。
1. 「WinMX」を使って他人に音楽ファイルをダウンロードできるようにした。
2. 知人を「金を寄越さないとただじゃおかない」と脅迫した。
3. 街角で知らない人をいきなり殴りつけた(怪我はなかった)。
意外に感じるかも知れないが、答えは1>2=3だ。著作権法違反は最高で3年以下の懲役又は300万円以下の罰金なのに対し、2は刑法の脅迫罪、3は同じく刑法の暴行罪に当たり、それぞれ2年以下の懲役又は30万円以下の罰金と定められているのだ。
○ネット黎明期からつきまとってきた著作権侵害
だが、このような重い罪の犯罪行為であるにも関わらず、インターネットには、その黎明期から常に、著作権侵害の問題がつきまとってきた。
日本でインターネットが普及し始めたのは1995年頃からだが、複数の関係者によると、この頃には、アメリカなどインターネットの普及で先を進んでいた各国で既に、ソフトウェアを中心とした違法ファイルがホームページ上にアップロードされ、日本でも一部のマニアがそれらのサイトに参加して交換などを行っていた。ソフトウェアをバイナリファイル化して、世界規模のニュースグループに流すといったケースもあったという。
国内でのインターネット普及が加速し始めた1997年頃になると、日本でも、サイト上にソフトウェアやゲームソフトをアップロードし、同好の士に配布するケースが見られるようになった。主に、海外の無料ホームページスペースのアカウントを取得し、ソフトウェアなどのファイルを圧縮・分割してアップロード、そのサイトを訪れた人たちは、それを勝手にダウンロードしていくというやり方だ。当初は、ソフトをそのまま圧縮して置いておくという原始的なやり方だったが、まもなく、著作権団体やソフトベンダーの要請で、無料ホームページスペースの運営側が大きなサイズのファイルを無条件に削除していくようになると、今度はマニアの開発した分割ソフトで、1本のソフトを何十にも分割してみたり、画像ファイルの中に分割したプログラムファイルを仕込み、一見写真にしか見えないように加工してアップロードするようになったりと、「イタチごっこ」の様相を呈するようになった。
一方で、掲示板などで連絡を取りつつ、郵送でCD-Rに複製したソフトウェアなどを交換する「OFF交換」、自宅のパソコンを専用ソフトで簡易サーバー化し、自分のIPアドレスを掲示板で公開してマニアのアクセスを待ち、交換を行う方式も普及。
ISDNの普及でネットの高速化が始まったこともあり、多くのマニアが、違法行為と知りつつ、自分のソフトウェア・ライブラリを誇るかのように交換や配布に励んだ。
中でも悪質なマニアは、公共機関や大学のサーバーの管理がこの頃は甘かったことに付け込み、それらのサーバーに侵入。サーバーが光ファイバーなどの太い回線に接続されていることを利用して勝手にソフトウェアをアップロードし、交換場所に使っていた。名だたる国立大学のサーバーが、マニアの"社交場"と化していたこともあったという。
○P2Pソフトの登場と氾濫
1999年頃になると、日本のインターネット界では、ケーブルテレビ・インターネットなどの形で常時接続化が始まり、ブロードバンド時代が目前に迫って来ていた。そんな時に登場したのが、Peer to Peer(P2P)ソフトだ。代表的なものが、アメリカで開発された「Napster」。Napsterが運営する専用検索サーバーに自分の保有ファイル名を登録し、交換自体は交換相手のパソコンと直接やり取りをするという仕組みのソフトで、CDから吸い出した音楽ファイルの交換用ソフトとして全世界的にブレイク、CD業界の売上が急減するなどの問題を起こした、とされる。
「Napster」は、その手軽さが日本でも評価され、ユーザーは急増。折しも、ホームページスペースなどへの違法ファイルのアップロードの摘発が始まっていたこともあり、マニアたちは急速に「Napster」や「Gnutella」などのP2Pソフトへと流れて行った。
だが、事実上、違法ファイル交換専用ソフトになってしまった「Napster」は、レコード会社などからの猛烈な反発を受け、2000年夏、米連邦地裁により「著作権違反行為の温床になっている」として営業停止命令が出され、2001年初頭には控訴審でも「Napster」側が敗訴、同年7月にはサービス停止に追い込まれた。
しかし、ここでもイタチごっこが起こる。著作権問題で失速した「Napster」に代わり、その後継ソフトとも言える「WinMX」が急速に普及を始めたのだ。元々アメリカで開発されたこのソフトは、「Napster」をも上回る手軽さと検索能力が受け、日本でも、違法ファイル交換の主流の座を確保する。
この年は、ちょうど国内でADSLの普及が始まった年。ブロードバンドの本格普及に伴い、交換されるファイルも、音楽ならシングルからアルバム、ソフトウェアならプログラム単体からCDの内容丸ごと、映画なら1本そのままと大型化し、ユーザーも急増して行った。
(日比哲哉)
【レポート】ファイル交換による著作権侵害の現状(2)
に続きます。
オンラインストレージサービスで音楽/ゲームなど無断「公開」した男2人逮捕
ファイル交換ソフト使用による著作権侵害での逮捕者に罰金命令
コンテンツ無許可アップロードで学生などを逮捕、ファイル交換ソフトで初の摘発
コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)
http://www.accsjp.or.jp/
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