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【CEATEC JAPAN 2003レポート】坂村教授、講演前に異例の「FAQ」

2003/10/07

東京大学大学院教授 坂村健氏
「CEATEC JAPAN 2003」の初日、「ユビキタスコンピューティング環境の実現に向けて」と題する講演を行った東京大学大学院の坂村健教授。しかし聴衆の関心は、表題の内容だけでなく、2週間前に行われたT-Engineフォーラムとマイクロソフトとの提携にもあった。

坂村氏は、演壇につくなり「(件の提携について)うまく情報が伝わっているところと、伝わっていないところがある。記事を書かれる方のご感想と、私の言っていることがごっちゃになっている。(マイクロソフトによる)陰謀説のようにもなっていて、マイクロソフトも気の毒だ」と話し、誤解が発生して当惑していることを明らかにした。

「誤解」はこのようにひとつずつ画面に表示されていった
特別講演の本題に入る前に、「典型的な『質問』にお答えします」というスライドを表示し、2週間前の記者会見からこの日までの間に発生した「誤解」をひとつひとつ画面で紹介。Q&A形式で説明を行っていった。この「誤解の解消」は実に30分以上に渡って行われ、講演が終わってみれば、本題よりも長い時間が割かれていた。

・マイクロソフトからストックオプションを貰ったのでは

最初に表示されたのは、裏ではマイクロソフトとの間で多額のお金が動いているのではないかという見方。坂村氏は「オープンアーキテクチャで誰もが入れる団体であるT-Engineフォーラムに、マイクロソフトが入りたいということなのでOKしたというだけ。組み込みLinuxで有名なMontaVista Softwareとは半年前に提携に合意して発表しているのに、マイクロソフトとの提携だけが大きく報道されてしまった」とし、マイクロソフトだからといって特別な取引があったわけではないと説明、"陰謀説"を否定した。

・共通の敵リナックスに対抗するための協力では

「どういうことからこんな話になるのかわからない。T-EngineフォーラムはMontaVistaと一緒にT-Linuxをやろうという発表をしており、敵はいない。なぜ私が戦う人に見られてしまうのか。誰かを叩きつぶすとか、日本対アメリカとか、そういう戦う人物がいなければいけないのか。10年以上前、米スーパー301条のときも"敵がいる"などと言われた。なぜか見えない敵が出てきてしまう」と話し、Linuxは敵ではないのだからそれに対抗する必要はないとする。

・坂村がシアトルに行って協力を頼んだのではないか

「そんなことはない。(昨今の世界情勢で)アメリカに行くのも難しくなっており、最近アメリカには行っていない。チャンスがあれば行きたいと思うが」

・米国マイクロソフト社に無断で日本マイクロソフト社がやったことなのではないか

「マイクロソフトは日米一体となってやっており(T-Engineプラットフォームに取り組んでおり)、そんなことはない」

・「GPLは知的著作権を放棄する考え方だ」などと言ったのですか

「私はLinuxのLinus Torvaldsさん、GNUで有名なRichard Stallmanさんとも親交がある。『GPLは知的財産権を放棄する考え方だ』などと言った覚えは一度もない。そもそもGPLはコピーライトに対抗するコピーレフトという考え方を現行の社会の中で実現する仕組みであり、全くパラダイムが異なるので一言で言えるような問題ではない」とし、発言の存在を否定。

・「リナックスのモデルは国を滅ぼす」などと古川さんと意見が一致したのですか

「Linuxがどうだという話は一回もマイクロソフトとはしていない。話もしていないことに一致もできない」

・庇を貸して、母屋を取られるのではないか

「そういうことを思われるのは分かるが、TRONの上に乗せたプログラムが乗っ取るというのは難しい。技術系以外の方に説明するのは難しいが、PCの世界と組み込みの世界は違うということを理解してほしい」とし、割り込みやタスク制御をTRONが担うシステムをWindowsが乗っ取ることは、アーキテクチャ上難しいと説明。

・「ソフトがすべてタダなんて、資本主義の国を崩壊させる行為だ」などと言ったのですか

「確かに言った。ただし、TRONがタダだと言っているのであって、その上でミドルウェアを作るなど何かする人はお金を取ればいい。もちろんタダでもいい。『みんなが全部タダにしたら』ソフト産業が成り立たなくなる、という意味で言ったのであって、タダでソフトを配る人がいたら資本主義が崩壊するなんてことは言っていない。こういう複雑な文脈を簡単に結論づけようとするから……」

○坂村氏「つい興奮したくもなる」

リアルタイムOSと情報処理系OSはそもそも用途が異なり、どちらが良いというものではない
坂村氏はここまで口にしたところで一旦話を中断し「スタッフから『興奮しないように』と言われているので」と笑いながら、演台に置かれたコップの水を飲み干した。そして「つい興奮もしたくなります。ストレスもたまります。私は普通の人間で、聖人ではありません」と、主張が正しく伝わらないもどかしさが鬱積していることを吐露した。

リアルタイムOSとPCなどに使われる情報処理系OSはそもそも目的が異なることを再度解説し、「何度も言っているが、TRONとWindowsが戦うとか、TRONとUNIXが戦うとかいう話はおかしい。それは極端に言えば自動車と飛行機の戦いのようなもの。マーケティング的な戦いはあるかもしれないが、技術的な戦いはない。情報処理系のOSはリアルタイム処理には限界があるので、それにリアルタイムOSのカーネルを供給するのは自然なこと」と重ねて説明。TRONとWindowsが融合することは、情報機器の技術的な進化の上では何ら不思議なことではないと強調した。

(日高彰)

【CEATEC JAPAN 2003レポート】日本のエレクトロニクスを激励する出井・坂村両氏
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/10/07/21.html

TRON陣営とマイクロソフトが連携、情報家電の基盤共同開発へ
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/09/25/12.html

【レポート】TRONプロジェクト20年を迎えた坂村健教授「今は3度目のチャンス」
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/07/29/07.html

CEATEC JAPAN 2003が開幕、PSXの詳細も明らかに
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2003/10/07/19.html

T-Engineフォーラム
http://www.t-engine.org/

CEATEC JAPAN 2003
http://www.ceatec.com/


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