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M-Vロケットも3機連続成功 - JAXA会見、後継ロケットにも言及

2006/02/23

大塚実

打ち上げに成功したM-Vロケット8号機(提供:JAXA、以下全て)

既報のように、赤外線天文衛星「ASTRO-F」を搭載したM-Vロケット8号機が22日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝属郡肝付町)より打ち上げられた。M-Vロケットの打ち上げは、昨年7月の6号機(ASTRO-EII、すざく)以来、およそ7カ月ぶり。同ロケットとしては5号機からの3機連続成功で、信頼性について一定の評価を得た形だ。なお打ち上げ後、JAXAは衛星の愛称を「あかり」と発表した。

「あかり」は、日本で初めての本格的な赤外線天文衛星。全長3.7m・重量952kgという大きさで、口径約70cmの赤外線望遠鏡を装備している。観測機器を液体ヘリウムで極低温(-260℃以下)に冷却しており、高感度の赤外線観測が可能となっている。液体ヘリウムでの冷却は「すざく」でも行われており、その時には打ち上げ後1カ月で、液体ヘリウムを全て喪失するというトラブルを起こした(本来の寿命は2年以上)。しかし「あかり」はヘリウムガスを宇宙空間に直接排気するようになっており、機体内部で還流が生じて熱上昇を招いた「すざく」とは、同じ不具合が発生しないことが確認されている。

遠赤外線用の「FIS」と近・中間赤外線用の「IRC」という2つの観測装置を搭載しており、地上からは観測できない幅広い波長範囲において、高感度の観測を行う。全天のサーベイ観測や特定領域の詳細な観測を実施し、銀河の誕生・進化、生命を作る元になる元素・分子の起源、恒星・惑星系の誕生・進化など、宇宙の歴史の解明が期待されている。今後の運用は、2カ月程度後からサーベイ観測が中心のフェーズ1、8カ月後には詳細指向観測も加えたフェーズ2を開始する予定で、液体ヘリウムが枯渇する18カ月後以降のフェーズ3では、IRCの近赤外線カメラによる詳細指向観測を行う。

「あかり」と命名された赤外線天文衛星「ASTRO-F」

愛称については、「赤外線観測というのは、宇宙のチリで隠されている部分を見通すことができるもの。"あかり"は遠いところから暗い中に認められる光のことで、適切と思う」(井上一・JAXA理事)ということで、この名称に決まったという。ちなみにほかの候補として「あかつき」「ひとみ」という名称も上がったが、「未来を照らす"あかり"になる」(同)という期待も込めて決定した。

今回の打ち上げ成功により、JAXAはロケットについて、2つの側面からの成果を得たと言える。1つは、JAXAとして前例のない「1カ月以内での大型ロケット3機連続打ち上げ」を実現したことだ。天候不良で打ち上げが1日遅れたものの、先月24日のH-IIAロケット8号機(ALOS、だいち)、今月18日の同9号機(MTSAT-2)に続く成功で、"公約"を果たした立川敬二・JAXA理事長は「これで日本の宇宙開発も、着々と軌道に乗っていけるのでは」と期待を述べた。JAXAの打ち上げ遂行能力という点で、今回の実績は1つの指標になるだろう。

そしてもう1つは、M-Vロケットとして3機連続の打ち上げ成功となったことだ。2000年2月の4号機では、第1段ノズルの破損により、X線天文衛星「ASTRO-E」の軌道投入に失敗した。5号機(MUSES-C、はやぶさ)ではその対策のため、2段目を一新するなどの大がかりな改修が行われたが、3機連続成功により、その対応について一定の評価を得たと言えそうだ。ただ3機という実績はまだ信頼性の評価をするには少なすぎる数字であり、一歩前進とは言えるものの、今後さらに回数を重ねることが必要になるだろう。

ロケットに搭載のカメラ画像。1と2は上方向、3と4は下方向を映している

右上は分離直後の3段目。この後、畳まれていたノズルが伸展するのはM-Vならでは

しかし、M-Vロケットの先行きは不透明だ。これまで、旧・宇宙科学研究所(ISAS)の科学衛星はMシリーズで、旧・宇宙開発事業団(NASDA)の実用衛星はN/Hシリーズで打ち上げられてきた経緯があるが、両機関のJAXAへの統合により、"科学衛星はM-Vロケットで打ち上げる"という前提が崩れつつある。立川理事長も「ロケットはあくまでもツール。打ち上げる衛星の方が重要になる」と、こだわらない姿勢を見せる。

現時点でM-Vロケットの打ち上げは、2006年度に7号機(SOLAR-B)が予定されているほかは、その次が最短でも2010年以降の金星探査機「PLANET-C」になってしまう。質疑応答で立川理事長は、「その後(7号機より後)についてはこれから検討する」としており、今後の科学衛星について「どのロケットで打ち上げるかは、それぞれで最適化を図っていけばいい」と発言、検討結果によってはM-Vロケット以外での打ち上げもあり得るとの見解を示した。

一方、M-Vロケットについてはコストの高さが指摘されているが、森田泰弘・M-Vロケットプロジェクトマネージャは今後のコストダウンについて、H-IIAとのコンポーネント(電気系など)の共通化などが検討されているとコメント。さらにバリエーションの1つとして、H-IIAの固体ロケットブースター「SRB-A」をM-Vロケットの1段目として使う案も検討されていることを明らかにした。

現在は、後継ロケットについて「紙の上で」(森田M-Vプロマネ)検討しているということで、「その姿がもう少し具体的になったら予算を付けて、小型モデルの飛翔試験などを始める段階に移行できるだろう」(同)という見込みを示した。


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